交通事故後の通院、整形外科と接骨院の違いとは?自賠責保険を正しく使うために知っておくべきこと

ひかり整形外科クリニック 院長 神山真孝

交通事故に遭った直後、「とくにケガはない」と思っても、数日してから首が痛くなったり、背中や腰に張りを感じたりすることがあります。こうした症状は、事故の衝撃によって筋肉や関節に負担がかかったことで生じるケースが多く、いわゆる「むち打ち症(頚椎捻挫)」と呼ばれます。

このような交通事故が発端となる症状に対しては、自賠責保険を使って治療費の補償を受けることができます。ただし、通院先の選び方によって、保険の対応や将来の補償に大きな差が生じることがあるため、注意が必要です。

この記事では、「整形外科」と「接骨院(整骨院)」の違いをわかりやすく解説し、どちらを選ぶべきかを医療・保険両面の視点からお伝えします。

整形外科と接骨院の違いとは?

整形外科は“医師が診断・治療”を行い、理学療法士がリハビリを行う医療機関

整形外科は、国家資格を持つ「医師」が診察を行う病院やクリニックです。骨や関節、筋肉などのけがや痛みに対して、レントゲンやエコーなどの検査機器を使った診断を行い、症状に応じて薬の処方、注射、理学療法士によるリハビリなどを行います。

また、事故との因果関係を証明する診断書や後遺障害診断書の作成もできるため、自賠責保険の請求に必要な正式な書類をすべて揃えることができます。

接骨院は“柔道整復師”による手技中心の施術施設

接骨院(整骨院)は、「柔道整復師」という国家資格を持つ施術者が、マッサージや電気治療などを行う場所です。主に急性期の骨折・捻挫・打撲などの施術が中心で、医師ではないためレントゲン検査や診断書作成、薬の処方はできません。

交通事故治療は整形外科に通院することが重要

事故の治療で最も大切なのは、医師による客観的かつ継続的な診察を受けることです。整形外科では、毎回の診察ごとに症状の変化が記録され、これが保険会社に対する重要な根拠資料になります。

保険会社や自賠責の審査機関は、医師による「医学的根拠に基づく診断」を重視しており、整形外科での治療は信頼性が高く、保険の認定がスムーズです。

逆に、接骨院のみでの通院は、事故との因果関係や治療の必要性が証明しづらいため、治療費が途中で打ち切られるなどの不利益につながるケースもあります。

整形外科と接骨院の併用は原則としておすすめできません

近年、「整形外科と接骨院の併用は可能ですか?」という質問を多くいただきますが、当院としては原則として併用はおすすめしておりません。

理由は以下の通りです。

  • 診療の一貫性が損なわれる

医師(整形外科)と柔道整復師(接骨院)では治療方針が異なるため、症状の評価や施術内容にばらつきが生じ、事故後の回復経過が不明確になる恐れがあります。

  • 保険会社から不審に思われるリスク

特に整形外科の受診頻度が低く、接骨院ばかり通っている場合、「医学的管理が行われていない」と判断され、慰謝料や治療費の支払いが中断される事例もあります。

  • 実際の事例:通院打ち切りに

ある患者さまは、整形外科の初診後、接骨院のみに通っていたところ、保険会社から「医師の診察がないため治療の妥当性が確認できない」とされ、2ヶ月目で治療費が打ち切られたというケースがありました。

その後、整形外科に戻っても「医師による継続的な記録がないため後遺障害申請が難しい」と言われ、補償面でも不利益を被る結果となってしまいました。

このように、安易な併用は将来の補償や治療の正当性にマイナスとなる可能性があります。交通事故後の通院は、一貫して整形外科で受けることが最も安全で確実です。

後遺障害の申請にも整形外科が不可欠

事故の後に症状が長く残ってしまった場合、「後遺障害等級認定」を申請することで、追加の慰謝料や補償を受けられる可能性があります。

この申請の際に必要な「後遺障害診断書」は、医師でなければ作成できません。さらに、症状の経過や治療歴を証明するためには、継続的な通院記録と診察内容が重要です。

接骨院だけに通っていた場合、後遺障害が残っていたとしても、認定されない可能性が高まります。事故後は「もしもの時」のことを考え、必ず整形外科での診察を継続しましょう。

女性の患者さまも安心して通える整形外科

当院では、女性医師や女性理学療法士が在籍しており、女性の患者さまでも安心して治療を受けていただける環境を整えています。男性スタッフに体を見せることに抵抗がある方も、丁寧なカウンセリングとプライバシーへの配慮で、不安なく通院できます。

交通事故後は整形外科に一本化を

交通事故にあったら、まずは整形外科を受診し、医師による正確な診断と適切な治療を受けることが大切です。接骨院での施術は、整形外科での診療があって初めて意味を持ちますが、併用によって補償の道が閉ざされることもあるため、迷ったらまず整形外科を選ぶことが大原則です。

事故後の治療や手続きで損をしないためにも、当院のような信頼できる整形外科で、安心して治療を始めてください。

ひかり整形外科クリニック 院長 神山真孝